先日、Qwen3.8と話していたら、「折腾」という言葉を教えてもらいました。中国のテック界隈で使われている用語で、元々は「寝返りを打つ」とか「人を振り回す」という意味なのに、テック界隈では「泥臭くあれこれ設定をいじくり回す、ハックする、とことんやり込む」というニュアンスで使われるらしい。ハッカー精神に満ちた、最高に味わい深い言葉ですよね。
そこから気になって調べてみたら、中国のAI界隈にはこんなふうに字面と実際の意味がかけ離れた独特なスラングがたくさんあることが分かりました。今回は僕が特にお気に入りを見つけた8つの言葉を、Qwen3.8 Maxの解説付きで紹介します!
以下はQwen3.8が教えるAI用語です。一応GLM-5.2にファクトチェックというか確認もしてもらいました。Qwen3.8モデルが存在しないってこと以外はあっているという回答でした。データのカッティングがあるから最新モデル知らないのは問題ない。つまり、それ以外は結構よく使う単語らしい。ざっと目を通すと、ファンタジー系というか、魔術的な趣があって良いです。
炼丹(liàndān):AIのモデル学習はまさに錬金術
一番好きなのがこれです。直訳すると「仙人が不老不死の薬を煉り上げること」、つまり錬金術のことです。AI界隈では、ディープラーニングのモデル学習を指します。深層学習って、なぜうまくいくのか理論的に完全には解明されていないブラックボックスな部分が多いですよね。GPUという炉にデータとパラメータという材料を放り込み、何日もかけて良いモデルという仙丹が焼き上がるのを祈りながら待つ。その様子がまさに錬金術だ、と研究者たちが自虐的に使い始めたそうです。「今日もまた炼丹してるよ」と言えば「今日もまたGPU回してモデル学習してるよ」という意味になります。
调参侠(tiáocān xiá):パラメータ調整のヒーロー
炼丹とセットで使われることが多い言葉です。直訳は「パラメータ調整の侠(ヒーロー)」。モデルの精度を上げるためにひたすらハイパーパラメータのチューニングをしているエンジニアを指します。地道に数字をいじくり回す姿を「侠」と呼ぶところに、中国ネット文化のユーモアを感じます。
咒语(zhòuyǔ):プロンプトは呪文である
直訳は「呪い」ですが、AI界隈ではプロンプトのことを指します。画像生成AIやLLMは、入力する言葉の順番や組み合わせによって出力が劇的に変わるので、まるで魔法使いが呪文を唱えているようだ、ということから生まれた表現です。良いプロンプトの共有は「咒语分享(呪文の共有)」と呼ばれます。ちなみにプロンプトを入力する行為自体は「念咒(呪文を唱える)」と言います。
魔法师(mófǎshī):プロンプトエンジニアは魔法使い
咒语の派生語です。複雑なプロンプトを操って、AIから思い通りの出力を引き出す達人を「魔法使い」と呼びます。プロンプトエンジニアという職業名が、そのままファンタジーの職業名になっているのが面白いですよね。
套壳(tàoké):中身のないAIアプリへの痛烈な皮肉
直訳は「殻を被せる」。AI界隈では、OpenAIなどの他社APIを呼び出しているだけで独自の技術が何もないチャットUIだけのアプリ、いわゆるラッパーアプリを強くディスる時に使います。「これただの套壳アプリでしょ」と言えば「これただのAPIラッパーじゃん、独自性ゼロでしょ」という意味です。AIバブルへの冷ややかな視線がにじみ出る、とても現代的なスラングだと思います。
翻车(fānchē):AIのデモが大失敗する
直訳は「車がひっくり返る」。AI界隈では、新製品の発表会でデモが失敗したり、AIがとんでもない嘘(ハルシネーション)をついたりして大恥をかくことを指します。「发布会翻车了」で「発表会で盛大にコケた」という意味です。映像が脳裏に浮かぶ、すごく分かりやすい表現ですよね。
智商税(zhìshāng shuì):情弱が払う税金
直訳は「知能指数税」。AI〇〇と銘打って高額で売られている中身のないツールやセミナーに対して、「あれは智商税だ」と切り捨てる時に使います。賢い人から見ればただの情弱ビジネスだよ、という辛辣なニュアンスです。AIバブルに乗じた怪しい商売が世界中で横行している今、どの言語圏でも必要とされている概念かもしれません。
赛博菩萨(sàibó púsà):サイバー菩薩
個人的に最も好きな言葉の一つです。直訳は「サイバー菩薩」。超便利なAIツールを無料でオープンソースで公開してくれたり、神レベルのプロンプトを無償で共有してくれたりした開発者に対する最上級の賛辞です。コメント欄で「〇〇さんはまさに赛博菩萨だ!」と称賛されているのを見ると、なんだかこっちまでありがたくなってきます。
最後に
今回紹介した言葉たち、特に炼丹や套壳あたりは、中国のAIエンジニアたちの技術に対するスタンスや、ビジネスへのシニカルな視点がよく表れていて、日本語にはない面白さがあるなと感じました。折腾みたいに、いじくり回すこと自体を楽しむハッカー精神も素敵です。
言語は文化を映す鏡だなと改めて思います。中国のAI界隈を覗く時は、ぜひこうしたスラングにも注目してみてください。用語の意味が分かるだけで、コミュニティの空気感がぐっと身近に感じられるはずです。